文字列を変数として扱う場合、こんなふうに書くことが多いと思う。
このコードでは、strという変数=入れ物を用意して、その中に"がちょ〜ん"という文字列を入れている、かのように見える。ところが、実際に起こっていることはそれほど単純ではない。

まず、ここで宣言しているstrはString型のオブジェクト変数だということに注意。オブジェクト変数はintやcharなどのプリミティブ変数とは違って、「参照」を格納するために使われる。つまり、strという変数に入っているのは、"がちょ〜ん"という文字列そのものではない。この文字列を保持しているString型オブジェクトがシステムの中のどこか（おそらくはメモリ上）に作られ、その場所を表す値（これを参照という）をstrの中に入れているのだ。

ここまでは、たいていの入門書に書いてある。

さて、ここからが本題。String型のオブジェクトを作っているのにコンストラクタを呼ばなくていいのはなぜか？ StringクラスのAPIリファレンスを見ると、「String(String original)」というコンストラクタがある。暗黙のうちにこいつが呼ばれているのだろう、と私は考えた。つまり
みたいな感じで
と同じだろうと解釈したのだ。自著にもそう書いた。しかしこれは間違いである。APIリファレンスには次のように書かれている。
つまり、ダブルクオートで囲まれた文字列が「現れた時点」で既にオブジェクトが作られているのである。私の書いたコードでは、これを更にコンストラクタに渡しているわけで、全く無駄なことをしていることになるのだ（がちょ〜ん）。

かと言って、String型オブジェクトを作る際にコンストラクタを呼ぶのは常にで無駄である、というわけではない。StringクラスのAPIリファレンスを見ると、びっくりするぐらいいろいろなコンストラクタがあり、それぞれに想定された使い方があるのだ。最近、その中の1つを使えばUnicodeの文字列を簡単にShift_JISに変換できることを知った。

Javaの文字列は意外に奥が深いミステリーゾーンである。