2007年09月28日(金) 高知新聞夕刊 閑散期の宿を活性化
大月発くろしお便り(黒潮実感センター)
閑散期の宿を活性化

魚の身をすってつくるさつま汁(写真はいずれも大月町柏島) 魅力は夏だけ?
柏島と言えば夏、澄み切った海でのスキューバダイビングや海水浴がまずイメージされるだろう。実際夏から秋にかけては県内外から多くのレジャー客が柏島を訪れる。柏島って泊まるところあるんですか?とよく訊かれる。小さな島ではあるが実は柏島には旅館民宿が二十六件もある。
夏場はダイバーやレジャー客でどこの宿も満杯になるが、冬から春にかけては磯釣り客を泊める宿以外はほとんど開店休業状態である。その訳は夏にしか柏島に来たことがない人にはわからないと思うが、冬から春にかけては豊後水道を吹き下ろす北西の季節風が吹き荒れ、さながら日本海のようであるからだ。

柏島沖で獲れたブリの水揚げ 柏島の郷土料理
柏島のもうひとつの魅力は食。柏島は周囲を海に囲まれているので、海の幸を活かした四季折々の郷土料理が多い。代表的なものとしては柏島沖で獲れた天然ブリで作る姿寿司「へだ寿司」がある。このへだ寿司は晴れの日のごちそうで、島ではお祝い事のあるときなどに作られる。
天然ブリで作るへだ寿司(大月町役場提供)
十月になると柏島沖でのブリの飼い付け漁が始まる。飼い付け漁とは毎日決まった場所と時間に、アジやイワシのミンチを「ばくだん」と呼ばれる袋一杯に詰め込んだ撒き餌を投入し、ブリを集め、船から一匹ずつ手釣りで釣る。網で獲る漁よりは効率は悪いが魚に傷を付けることが少ないので高値で取引される。
お昼過ぎ、組合のサイレンが二回鳴りブリの水揚げが知らされると、島の人が次々集まってきてブリを一本二本と買い求めていく。

さつま汁。すり鉢にネギと落花生を入れてできあがり(大月町役場提供) 島の人が好んで日常よく食べるのがさつま汁である。これはアジやトンゴロ(トウゴロウイワシの仲間)、タイなどの身を生もしくは焼いてすり鉢で摺り、そこに麦味噌を入れ、魚の粗で取った出汁で伸ばしながらとろりと仕上げる。最後にネギを散らし、好みで煎った落花生を砕いて入れる。そうすると香ばしさが増す。これをぬくぬくのご飯にかけていただくのである。その他にも「こうし飯」、魚のすり身の天ぷら、「キビナゴのほおかむり」、「ところてん」、グジマ(ヒザラガイ)のぬた、「ブリうどん」など枚挙にいとまがない。
人情も魅力
来年度、高知県では「花・人・土佐であい博」が始まる。であい博事業とは、地域における暮らしや産業に密着した資源を活かして「こだわり土佐人」がプロデュースする多彩な「体験」や「食」のメニューにより,県外からの誘客や県内における交流の拡大につなげるためのイベントである。
そのプレ事業として、柏島では「島おこしの会」が中心となって、閑散期の冬場に、旅館民宿の女将さんの指導で郷土料理作り体験を行い、旅館民宿に泊まってもらおうと、十月から実施する予定である。
初春の風物詩。まだ寒い海につかりながらめのりを掻く
夏場は大勢のお客さんでごった返し、宿の女将さんらとゆっくり話をする機会などほとんどないが、閑散期の冬から春にかけては、時間はたっぷりある。おいしい郷土料理を食べ、島内を探索したり、島の人といろんな話をするのもまた楽しいものである。夏の海だけが柏島の魅力じゃない。もう一つの魅力は柏島の人情ではないだろうか。島に住んでる私はそう思う。

こうし飯。年越し飯から来ているようで新年を迎える時やお祝い時につくる。めのり(岩のり)とたくあんが入っている少し甘いご飯
柏島海中散歩
「これでもエビの仲間」
オルトマンワラエビ(約5cm)
サンゴの一種であるウミウチワやウミトサカ類の枝をよく見ると、クモのような生き物が。八本の細長い脚は麦わらのよう。これまでその特徴からムギワラエビと呼ばれていたが、最近分類学的に見直され名前が変更された。
エビという名前がついているがエビらしい尻尾は見えない。よく見ると腰が折れたようにおなか側に折り曲げた形をしている。ウミウチワから離すと元に戻ろうと脚をそろえて伸ばし、尻尾を使って後ろ向きに泳ぐ。そんな様子はやっぱりエビ。金色に輝く細長い脚の関節に、黒と白の指輪をはめたような姿が何とも美しい。
(センター長・神田 優)
閑散期の宿を活性化

魚の身をすってつくるさつま汁(写真はいずれも大月町柏島)
柏島と言えば夏、澄み切った海でのスキューバダイビングや海水浴がまずイメージされるだろう。実際夏から秋にかけては県内外から多くのレジャー客が柏島を訪れる。柏島って泊まるところあるんですか?とよく訊かれる。小さな島ではあるが実は柏島には旅館民宿が二十六件もある。
夏場はダイバーやレジャー客でどこの宿も満杯になるが、冬から春にかけては磯釣り客を泊める宿以外はほとんど開店休業状態である。その訳は夏にしか柏島に来たことがない人にはわからないと思うが、冬から春にかけては豊後水道を吹き下ろす北西の季節風が吹き荒れ、さながら日本海のようであるからだ。

柏島沖で獲れたブリの水揚げ
柏島のもうひとつの魅力は食。柏島は周囲を海に囲まれているので、海の幸を活かした四季折々の郷土料理が多い。代表的なものとしては柏島沖で獲れた天然ブリで作る姿寿司「へだ寿司」がある。このへだ寿司は晴れの日のごちそうで、島ではお祝い事のあるときなどに作られる。

天然ブリで作るへだ寿司(大月町役場提供)
十月になると柏島沖でのブリの飼い付け漁が始まる。飼い付け漁とは毎日決まった場所と時間に、アジやイワシのミンチを「ばくだん」と呼ばれる袋一杯に詰め込んだ撒き餌を投入し、ブリを集め、船から一匹ずつ手釣りで釣る。網で獲る漁よりは効率は悪いが魚に傷を付けることが少ないので高値で取引される。
お昼過ぎ、組合のサイレンが二回鳴りブリの水揚げが知らされると、島の人が次々集まってきてブリを一本二本と買い求めていく。

さつま汁。すり鉢にネギと落花生を入れてできあがり(大月町役場提供)
人情も魅力
来年度、高知県では「花・人・土佐であい博」が始まる。であい博事業とは、地域における暮らしや産業に密着した資源を活かして「こだわり土佐人」がプロデュースする多彩な「体験」や「食」のメニューにより,県外からの誘客や県内における交流の拡大につなげるためのイベントである。
そのプレ事業として、柏島では「島おこしの会」が中心となって、閑散期の冬場に、旅館民宿の女将さんの指導で郷土料理作り体験を行い、旅館民宿に泊まってもらおうと、十月から実施する予定である。

初春の風物詩。まだ寒い海につかりながらめのりを掻く
夏場は大勢のお客さんでごった返し、宿の女将さんらとゆっくり話をする機会などほとんどないが、閑散期の冬から春にかけては、時間はたっぷりある。おいしい郷土料理を食べ、島内を探索したり、島の人といろんな話をするのもまた楽しいものである。夏の海だけが柏島の魅力じゃない。もう一つの魅力は柏島の人情ではないだろうか。島に住んでる私はそう思う。

こうし飯。年越し飯から来ているようで新年を迎える時やお祝い時につくる。めのり(岩のり)とたくあんが入っている少し甘いご飯
柏島海中散歩
「これでもエビの仲間」
オルトマンワラエビ(約5cm)
サンゴの一種であるウミウチワやウミトサカ類の枝をよく見ると、クモのような生き物が。八本の細長い脚は麦わらのよう。これまでその特徴からムギワラエビと呼ばれていたが、最近分類学的に見直され名前が変更された。

(センター長・神田 優)
更新:
諒太
/2009年 01月 06日 17時 16分