2012年10月27日 高知新聞朝刊 柏島発、水族館行き
柏島発、水族館行き

透明度30bの澄みきった青い海にグレが群れ泳ぐ
黒潮が接岸してきて透明度が増す秋の海は、黒潮に乗って運ばれてくる南方系の魚の稚魚が増え、年間を通じて最も魚の種類が多くなる。先日も潜ってきたが、抜けるような青い海に魚たちが乱舞している様は、いつ見ても感動する。
海に潜っていると水深十五〜二十数bのところに直径1・5bほどの円筒型の構造物がいくつも設置されている。中をのぞくとグレやハマフエフキ、イサキやニザダイの他、色とりどりの、俗に言うところの熱帯魚が入っている。これはチヌ篭(かご)というもので魚の習性をうまく使って魚を捕る漁具である。
素潜り漁師語る

海底に設置されたチヌ篭 円筒形の篭の横に長く飛び出しているのが回収用の網

やっと外に出れたと思いきやここも網の中
このチヌ篭漁をしている堺東洋さんに話を聞いてみた。堺さんは大月町柏島では有名な素潜り漁をする漁師さんで、この周辺の海の底の状態を誰よりもよく知っている。この魚はどこにいるか? 巣はどこにあってどうやって獲ればいいか? 魚の習性を熟知している。経験に基づく話の数々には思わず聞き入ってしまう。
チヌ篭は魚の道に仕掛ける。「魚は海の中のどこにでもおるがじゃのうて、家もあれば道もある。そこに仕掛けるがよ」。
柏島でのチヌ篭はもっぱらグレを捕るために仕掛けている。魚は入り口が狭く、少し暗い穴のようなところを好む。この習性を利用して篭の網目は少し小さくしており、入り口は50〜60a四方ほど。篭の内側に向かうにしたがいロートのように口が狭くなっていて、一度入ると抜け出しにくい構造になっている。堺さんによるとチヌ篭漁は昔、伊予の方から教わってきて、かれこれ30年ほどやっているとのこと。魚が入りやすいようにと試行錯誤して網の中や周囲に柴(しば)を取り付けてみたり、網目を小さくしてみたりした。しかし、柴は1年もしないうちに腐ってしまうし、網目が小さすぎると潮の抵抗が大きくなって流されたりするそうだ。海底に潜り篭をしっかりと岩やいかりに結んで固定しても、台風などで流されることもある。島の南岸の岩礁地帯には大きな魚もいるけれど、波が荒くてすぐに持って行かれる。そういう経験を踏まえながら、波当たりの比較的弱い島の北岸や湾内に設置している。転石帯から砂地にかわる辺りが、魚の道だそうだ。
網を設置してしばらくおいておくと魚が入る。しかし、それを取り上げるのが一苦労だ。これまでは船のローラーで篭ごと引き上げていたが、かなりの重量でもあるし、何度もあげていると篭を傷めることにもなる。そこで潜って篭の中の魚を突いて上がってくることもあったそうだが、今では篭の一部を開放してそこに回収用の網を取り付け、しばらく置いておく。狭く暗い篭に閉じ込められていた魚たちは、開口部から見える明るく広い場所に勝手に移動するので、こうして回収する。
食用とするグレやイサキなどはシメて出荷するが、熱帯魚は生かした状態でストックしておき水族館に売る。
熱帯魚の供給地

水族館に販売するためにいけすに畜養されている熱帯魚たち(はやぶさ水産協力)
柏島で熱帯魚の販売をしているはやぶさ水産では、チヌ篭で捕れた熱帯魚を養殖いけすに入れて畜養している。海から捕ってきた魚はそのまま水族館に運んでも餌につかずに死んでしまうことが多い。人工的な餌に慣らせる意味でもしばらく畜養するのがいいそうだ。このいけすに入らせてもらったが、水族館の大水槽を5倍濃縮したような、まるで竜宮城といった感じだ。それを全国各地の水族館が買い付けに来る。
最近は鮮魚売り場でもどこどこ産の○○という産地が明記されるようになってきた。水族館の展示も「南の海の魚たち」、「北の海の魚たち」だけじゃなく、高知県柏島産とか、和歌山県串本産などのように産地もどこかに入れ、またその場所の写真や紹介があると、見る人もその魚の育った海のことにも興味がわき、親近感もアップし、見方がかわってくるのではと思うが、新しい展示方法としていかがだろうか?

透明度30bの澄みきった青い海にグレが群れ泳ぐ
黒潮が接岸してきて透明度が増す秋の海は、黒潮に乗って運ばれてくる南方系の魚の稚魚が増え、年間を通じて最も魚の種類が多くなる。先日も潜ってきたが、抜けるような青い海に魚たちが乱舞している様は、いつ見ても感動する。
海に潜っていると水深十五〜二十数bのところに直径1・5bほどの円筒型の構造物がいくつも設置されている。中をのぞくとグレやハマフエフキ、イサキやニザダイの他、色とりどりの、俗に言うところの熱帯魚が入っている。これはチヌ篭(かご)というもので魚の習性をうまく使って魚を捕る漁具である。
素潜り漁師語る

海底に設置されたチヌ篭 円筒形の篭の横に長く飛び出しているのが回収用の網

やっと外に出れたと思いきやここも網の中
このチヌ篭漁をしている堺東洋さんに話を聞いてみた。堺さんは大月町柏島では有名な素潜り漁をする漁師さんで、この周辺の海の底の状態を誰よりもよく知っている。この魚はどこにいるか? 巣はどこにあってどうやって獲ればいいか? 魚の習性を熟知している。経験に基づく話の数々には思わず聞き入ってしまう。
チヌ篭は魚の道に仕掛ける。「魚は海の中のどこにでもおるがじゃのうて、家もあれば道もある。そこに仕掛けるがよ」。
柏島でのチヌ篭はもっぱらグレを捕るために仕掛けている。魚は入り口が狭く、少し暗い穴のようなところを好む。この習性を利用して篭の網目は少し小さくしており、入り口は50〜60a四方ほど。篭の内側に向かうにしたがいロートのように口が狭くなっていて、一度入ると抜け出しにくい構造になっている。堺さんによるとチヌ篭漁は昔、伊予の方から教わってきて、かれこれ30年ほどやっているとのこと。魚が入りやすいようにと試行錯誤して網の中や周囲に柴(しば)を取り付けてみたり、網目を小さくしてみたりした。しかし、柴は1年もしないうちに腐ってしまうし、網目が小さすぎると潮の抵抗が大きくなって流されたりするそうだ。海底に潜り篭をしっかりと岩やいかりに結んで固定しても、台風などで流されることもある。島の南岸の岩礁地帯には大きな魚もいるけれど、波が荒くてすぐに持って行かれる。そういう経験を踏まえながら、波当たりの比較的弱い島の北岸や湾内に設置している。転石帯から砂地にかわる辺りが、魚の道だそうだ。
網を設置してしばらくおいておくと魚が入る。しかし、それを取り上げるのが一苦労だ。これまでは船のローラーで篭ごと引き上げていたが、かなりの重量でもあるし、何度もあげていると篭を傷めることにもなる。そこで潜って篭の中の魚を突いて上がってくることもあったそうだが、今では篭の一部を開放してそこに回収用の網を取り付け、しばらく置いておく。狭く暗い篭に閉じ込められていた魚たちは、開口部から見える明るく広い場所に勝手に移動するので、こうして回収する。
食用とするグレやイサキなどはシメて出荷するが、熱帯魚は生かした状態でストックしておき水族館に売る。
熱帯魚の供給地

水族館に販売するためにいけすに畜養されている熱帯魚たち(はやぶさ水産協力)
柏島で熱帯魚の販売をしているはやぶさ水産では、チヌ篭で捕れた熱帯魚を養殖いけすに入れて畜養している。海から捕ってきた魚はそのまま水族館に運んでも餌につかずに死んでしまうことが多い。人工的な餌に慣らせる意味でもしばらく畜養するのがいいそうだ。このいけすに入らせてもらったが、水族館の大水槽を5倍濃縮したような、まるで竜宮城といった感じだ。それを全国各地の水族館が買い付けに来る。
最近は鮮魚売り場でもどこどこ産の○○という産地が明記されるようになってきた。水族館の展示も「南の海の魚たち」、「北の海の魚たち」だけじゃなく、高知県柏島産とか、和歌山県串本産などのように産地もどこかに入れ、またその場所の写真や紹介があると、見る人もその魚の育った海のことにも興味がわき、親近感もアップし、見方がかわってくるのではと思うが、新しい展示方法としていかがだろうか?
投稿:
Kanda
/2012年 12月 05日 13時 23分