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2007年10月26日(金) 高知新聞夕刊 チャンバラをする貝
大月発くろしお便り(黒潮実感センター)
チャンバラをする貝
びっくり眼でこちらを見るチャンバラ貝
びっくり眼でこちらを見るチャンバラ貝

「おっ、おいおい。俺たちをどうしようってんだ!」とばかりにびっくり眼でこっちを見ているこの生き物、居酒屋の小鉢の上ではよく見る貝だが、その正体は「チャンバラ貝」。標準和名はマガキガイという。
 和名の由来は貝殻表面のジグザグ模様が「籬(まがき)」つまり竹や柴などを粗く編んで作った垣に似ているところからついたという。でも高知じゃだれも「マガキガイ」なんて呼ぶ人はない。「チャンバラ貝」、もしくは「キリアイ」の愛称で親しまれている。こちらの呼び名の方がよっぽど気が利いている。

    「刀」を巧みに
  チャンバラやキリアイの由来は貝殻に付いているギザギザの蓋の形が刀に似ているからと思われているようだが、この貝、まさしく「チャンバラ」をするのである。ただしこの蓋で相手を切ろうとするものではなく、ひっくり返ったりしたときに起き上がろうとしてこの「刀」を巧みに使うのである。
 通常、殻の口を下にして這っているのだがひっくり返してみると、しばらくは殻の中に閉じこもっているが、次第に愛嬌たっぷりの長い柄のある眼を伸ばし辺りを伺い、安全だと思うとギザギザの蓋がついた足をおもむろに伸ばし殻から大きく身を乗り出し、貝殻の下に蓋をつっこみ、地面をひっかくようにして跳ね上げる。
 その反動を利用して貝殻をくるりと回転させ、元に戻るという寸法だ。まさに一瞬の出来事。そのとき「刀」を振り回すところから、チャンバラや斬り合いをしているように見え、この名前が付いたようである。
貝殻から大きく身を乗り出し、貝殻の下に蓋をつっこむ
貝殻から大きく身を乗り出し、貝殻の下に蓋をつっこむ

地面をひっかくようにして跳ね上げる
地面をひっかくようにして跳ね上げる

その反動で貝殻をぐるっと回転させ元に戻る
その反動で貝殻をぐるっと回転させ元に戻る

 通常は湯がかれた形で料理として皿鉢などの上にのっているが、漁師町では活かしておいている。もし生きたチャンバラ貝を見る機会があればちょっとひっくり返してみてはどうだろうか。
 チャンバラ貝は主に海底が砂泥の場所を好む。餌は海底の有機物を砂泥と一緒に食べているようである。通常一個体いるとその周りには常に何個体かいる。象の鼻のような長い口(吻)を伸ばし餌をあさる。
象のような長い吻と柄の付いた眼が特徴的
象のような長い吻と柄の付いた眼が特徴的


  漁師の知恵
 柏島の海ではキリアイ(幡多ではこちらの方が通り名)が結構とれる。獲れたキリアイはすぐには食べない。先ほど述べたように海底の泥や砂を一緒に食べているので、すぐに食べると口の中がジャリジャリして不味い。かごにつるして三日間ほど絶食させ、消化管内の砂を排出させる。
高知の居酒屋ではゆでたチャンバラ貝に必ず楊子が付いている。殻に引っ込んでしまった身を引きずり出すために使うのだが、柏島では使わない。どうするか?
 まず、キリアイを水揚げしたら一緒に鍋に海水を汲んでくる。鍋に貝を入れしばらく放置。そうするとじいっと貝が身を出してくる。次にコンロを弱火にセットする。いきなり火力全開だと急激に熱くなり、貝はびっくりして殻に閉じこもってしまうが、要するに「良い湯加減」にして、貝をだますのだ。  「おおの、心地えいねぇ」と言っているかどうかはわからないが、次第にお湯は熱くなりそのままご臨終。気持ちよさげに伸ばした足の先には例の「刀」が付いており、それを引っ張れば楊子なしでくるりっと最後まできれいに取れる。島の漁師に教わったこの食べ方、じつに貝の生態を熟知したものだと感心した。 
湯がきたてのぬくぬくを肴に漁師のおんちゃんらと一杯やるこの幸せは、島にいてこそのものだと思う。
海水で湯がいたキリアイ。「刀」が外に出ていて身を抜きやすい
海水で湯がいたキリアイ。「刀」が外に出ていて身を抜きやすい


                (センター長・神田 優)
更新: 諒太 /2009年 01月 06日 17時 17分

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