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2008年01月11日(金) 高知新聞夕刊 定置網の中は大騒ぎ
大月発くろしお便り(黒潮実感センター)
定置網の中は大騒ぎ
定置網の底から見上げたキビナゴの群れ。まるで雲のようだ(写真はいずれも大月町柏島)
定置網の底から見上げたキビナゴの群れ。まるで雲のようだ(写真はいずれも大月町柏島)
 海は広いな大きいな。体は小さくてもみんなで泳げば怖くない。平坦な砂地の海を泳いでいると、巨大なカーテンが現れた。カーテンに沿って泳いでいくと、なにやら怪しいトンネルが。向こうはどうなっているんだろう!好奇心旺盛な友達が入っていった。それ続けとばかりに僕もみんなと一緒にトンネルをくぐった。
 向こうは四角い部屋だった。ふーん、何かがある訳じゃなかったんだ。つまんないからと引き返そうとしたけど、入り口が分からなくなっちゃったよ。狭い部屋の中を僕らは大きな塊になって、変幻自在に形を変えながらグルグルと動き回る。ここがそうだと言わんばかりに突進する友達。みんなが一緒について行く。んっ?やっぱり違う。ここじゃない。
 どこだどこだと探し回っているうちに、別の大きい魚が入ってきた。うわぁトンパクくん(メアジ)だぁ。トンパクくんたちもトンネルの向こう側の世界に惹かれて入ってきたみたい。そこはトンパクくんにとってはまさにパラダイス!
 おいしい餌が狭い部屋に塊で泳いでいるのだ。おいしい餌って、それはもちろん僕たちキビナゴのことだ。
網のカーテンから続く未知へのトンネル?(網の入り口)
網のカーテンから続く未知へのトンネル?(網の入り口)


  大きな黒い影
 追うトンパク、逃げるキビナゴ。狭い部屋の中は上を下への大騒ぎ。広い海なら逃げ切れたかもしれないけど、この周囲約九b(五間)の四角い部屋の中じゃ逃げ場もない。下から追い上げてくるトンパクくんをかわそうと水面付近に逃げた時、ふいに友達の姿が視界から消えた。上を見ると大きな黒い影。そこから鋭いくちばしが海に突き刺さり、僕たちをつまみ上げていく。ウミネコだぁ。
 大騒動のあと、おなかいっぱいになったのかトンパクくんは僕らを追うのをやめた。助かったぁ。気がつくとさらに何匹かの友達の姿が見えなくなっていた。ほっとするまもなく、四角い部屋の中にまた緊張が走った。大きな黒い塊がものすごい勢いで泳いでくる。「きゃー」、悲鳴を上げたのはトンパクくんたちだった。さっきまで追う立場だったのが今度は追われている。大きな塊は羽を閉じ、水かきの付いた足を猛烈にかいて魚雷のように突き進み、次々とトンパクくんをくわえていった。ウミウだった。
 そうこうしているうちに友達が出口につながるトンネルを見つけた。んっ?来たときよりもちょっと狭い気もするけど。でも入っちゃえとばかりにみんなでトンネルをくぐる。あら?またしても部屋。それも心なしかさっきの部屋より小さい気がするのは僕だけ?僕らのあとを追ってトンパクくんも入ってきた。
夜明け前、網を絞って魚を寄せる
夜明け前、網を絞って魚を寄せる


  身も凍るような氷水
 夜明け前、「ブーン」という音が近づいてきて、僕らの部屋の横で止まった。なにやら人の話し声がするぞ。そうこうしていると部屋の上下と左右の壁(網)が近づいてきた。次第次第に網は絞られ部屋は狭くなり、トンパクくんも僕たちもおしくらまんじゅう状態になった。どうなってんだぁ!すると柄の付いた玉網が上からガサッと僕らをすくい上げた。そこから小さな四角いかごに入れられ揺すられた。網の目からは小さな友達は逃げ出した。
大きな目合いののかご網にキビナゴを入れ、残った大きいものだけを獲る
大きな目合いののかご網にキビナゴを入れ、残った大きいものだけを獲る

 しばらくして四角い網から僕らは小舟の四角いかんこ(船倉)に移された。「冷てー」身も凍るような氷水に入れられた僕らは数十秒間ビチビチとはね回った。次第に気が遠くなっていく。あーもうダメだぁ。遠ざかる意識の向こうで人の声が聞こえてくる。「今日もよう入っちょうねぇ」。
かご網から舟のかんこに入れる
かご網から舟のかんこに入れる


 柏島の小さな定置網では、日々こんな営みが、当たり前のように繰り返されている。
 獲れたてピチピチのキビナゴとトンパクを漁師さんからバケツ一杯もらった。新鮮なキビナゴはそのまま手開きにして刺身に。それを柚の酢と天然塩に少し付けて食べる。絶品!天ぷらも絶品!!残った魚はしおき(塩干し)にして酒の肴に。
 豊かさってこういうことなんだなぁ。今日も海の恵みに感謝。
新鮮この上ないキビナゴ
新鮮この上ないキビナゴ
 
               (センター長・神田 優)
更新: 諒太 /2009年 01月 06日 17時 21分

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