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2008年03月14日(金) 高知新聞夕刊 黒潮の「へそ」バタン島
大月発くろしお便り(黒潮実感センター)
黒潮の「へそ」バタン島
人なつっこい笑顔がかわいい地元の子どもたち(サブタン島)
人なつっこい笑顔がかわいい地元の子どもたち(サブタン島)
 先週から、高知大学黒潮圏海洋科学研究科のメンバーとフィリピンのバタン島の調査に出かけた。今回はその様子をレポートしたい。
 沖縄県の石垣島から南西に約四百`、台湾から南に約百九十`、フィリピンルソン島北端から北に約二百`のところにバタネス州バタン島はある。バタネス州はフィリピン最北の州で、州都のあるバタン島の他、イトバヤット島、サブタン島、その他の島々を含めたバタン諸島からなっている。
バタン島州都バスコ市街地。高台にある灯台から見渡せる
バタン島州都バスコ市街地。高台にある灯台から見渡せる

 暖流黒潮は赤道のすぐ北側を西向きに流れる北赤道海流に起源を持ち、これがフィリピン諸島の東にあるカタンドアネス島に最初にぶつかりその後北上し、バタン島周辺からその速度を一気に加速して日本南岸に流れ込む。いうなればバタン島は黒潮の「へそ」にあたる場所といえるかもしれない。黒潮流軸のまっただ中にあるバタン島周辺の海は青色よりむしろ濃い藍色で透明度はゆうに三十bを超える。今回バタン島の魚類相調査を行うにあたり潜水調査を行ったが、生息する魚類は日本にいるものとほとんど同じで、柏島で見慣れた魚たちばかりだ。

  フレンドリーな島バタン
 バタネス州全体の人口は約一万六千人。台湾の原住民がルートとなるイバタン族が住んでいる。現地語はイバタン語であるが、タガログ語や英語もよく通じる。美男美女が多いのも特徴である。
 街を歩いてまず思ったことは、ここの人は皆人なつっこくて親切であると言うことだ。こちらから挨拶すると皆にこやかに挨拶を返してくれたり、話しかけてくれたりする。最近少しずつ観光客が増えてきたとはいえ、まだ珍しいのかほとんど観光ずれしていないところが良い。
 ルソン海峡に浮かぶバタン諸島は常に波が高く、また台風の通り道であることからその自然環境ゆえにルソン島との交流が少なく、台湾の文化を含んだ独自文化が発達している。バタン島やサブタン島では独特の民家が今なお残っている。強い台風の影響を避けるためか、ストーンハウスと呼ばれるサンゴや石を漆喰で塗り固めた外壁に茅葺き屋根という造りの家が多い。家の中は涼しく快適だ。
ストーンハウス
ストーンハウス

 港には丈夫な堤防が無く常に波にさらされているため、基本的に船の避難や保管は浜である。またサブタン島には桟橋が無く、連絡船は浜に乗り上げ、舳先から登り降りをするためのはしごが付いている。しかし波があるので上り下りは必ず濡れることになる。
大波で浜に押しやられる連絡線を沖へ押し出す若者たち
大波で浜に押しやられる連絡線を沖へ押し出す若者たち

 船には船底の前端に穴が開いてそこにロープを通し引っ張り上げる。艫から強い波を受けると船が浜に乗り上げすぎてしまい動けなくなる。その場合多くの若い船員達がどぶりながら船を沖に押し出す作業をすることになる。今回私も助っ人に入った。

  干物のユニークな開き方
 この島の主産業は漁業と牧畜である。島のあちらこちらに牛や山羊が放牧されていて、牧草地は遠目に見るときれいに手入れをされたゴルフコースのようにもみえる。漁業はトビウオとシイラが主な対象魚で、街の至る所で大きなボウルに魚が入れられ売られている。
トビウオを売る漁師
トビウオを売る漁師

 夕方になると店先からトビウオの焼かれる良いにおいが漂ってくる。シイラがぶつ切りにされて量り売りされているところを見かけた。大胆にも山刀のような包丁で身に刃を入れ、刀の背を石で叩きながら骨ごとぶった切っていた。シイラやトビウオは干物としても売られている。その開き方が実にユニークだ。
 トビウオは頭と尻尾を切り取り、背開きにした上にさらに背骨と身とを皮一枚残した状態で開く。こうして背骨の中程にひもを通して吊す。基本は塩を振って干すのであるが独特でおもしろかったのはつぶしたニンニクを身になすりつけているところである。これが実にうまい。
トビウオの干物
トビウオの干物

 シイラは頭を真っ二つに割り骨を取り除き身だけにする。皮一枚を残した状態で頭から尻尾までを縦に切り、さらに身を約十個ほどのブロック状に切り分けて干す。シイラ、トビウオともに共通して言えることは網の上にのせて干さないと言うことだ。不思議とハエもあまりいない。
シイラの開き
シイラの開き


  幸せの物差し
 この島は交通の便が悪いこともあるだろうが、島だけで経済が成り立っている。漁業においては近代的な機器を用いて大量に獲って売ると言うことはない。県外に輸出したりすることなく島だけで流通するだけのものを獲り、それで暮らしが成り立っている。そのおかげで資源が枯渇することなく持続的な漁業が営まれている。
 島の人と色々話をしたところ、それで十分だということだった。足を知ると言うことか。昔ながらの漁業のあり方に懐かしさを覚えると共に、実はこれが今私たちに求められている地産地消であり、持続可能な社会のあるべき姿であるのかもしれないと思った。
 豊かさとは幸せを感じること。幸せであるかどうかは一人一人が自分自身に幸せの物差しを持っているかどうかではないだろうか。所得においては私たちよりは遙かに低いであろうここの人たちだが、ものがあふれる社会に暮らす私たちよりも豊かさは上なのではないかと、街や漁村、農村にあふれる笑顔を見ていてそう思った。
                (センター長・神田 優)
更新: 諒太 /2009年 01月 06日 17時 25分

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