2008年08月08日(金) 高知新聞夕刊 小さな学校の大きな灯
大月発くろしお便り(黒潮実感センター)
小さな学校の大きな灯
地域が育む子どもたち
「ドボーン、バシャーン」。
夏、柏島に続く旧橋から子ども達が次々に海に飛び込み、歓声がこだまする。真っ青な海に向かって飛び込むスリルと緊張感。そしてそれができたときの達成感。柏島で子ども達が一人前と認められる儀式でもある。先日もNHKの全国放送で流れ、番組を見た多くの人から柏島の子ども達がうらやましいという便りをもらった。
飛び込みをサポートする上級生、子ども達を見守る地域の人たちの温かいまなざし。ここで育つ子ども達は皆、地域全体に見守られて育つ。
周囲わずか三、九`の柏島には川が無く、昔から水は貴重品だった。当然プールなどはない。
六月下旬、児童の保護者や先生方が一緒になって、赤灯台の近くにある庄屋の浜を一斉清掃し、ブイとロープで囲いをして特設プールを作る。堤防の上には監視用のテントが張られ、毎日保護者が日替わりで監視をする、「海のプール」だ。
魅力あふれる小規模校
地域の子ども達に地域のすばらしさを、体験学習を通じて知ってもらいたいと思い、私たちはこれまで様々な取り組みを小学校やPTAの保護者の方達と一緒に行ってきた。ここでしかできない学習、島の地域の方々のサポート無くしてはできない学習、小規模校ならではの小回りの良さと、行き届いたきめ細やかな指導。
例を挙げると、アオリイカの資源を増やすため漁業者、ダイバー、林業関係者らと一緒に行う人工産卵床の設置、海のすばらしさを実感するシュノーケリングやクリアカヌー体験、海の水質調査、水の大切さを学ぶ学習、山川海のつながり学習、養殖の餌やり体験、島を訪れる観光客やダイバーらへの聞き取り調査、ビーチクリンナップ活動、お年寄りからの地域の文化の聞き取り調査、潜ってテングサを採り、それからトコロテンを作る実習、海藻押し葉づくり、郷土料理作り、トンボ池でのトンボやカエルの観察、子ども達が島の好きな場所の写真を撮り、それに物語を付けてパネルにし、島内を美術館のように見立てて展示する「島の美術館」、それらの学習の成果を地域の人に発表する島の子発表会。揚げればきりがないほどユニークな総合学習が柏島小学校では行われてきた。
全校児童二十人。都市部の人から見れば驚くほど小規模な学校だが、この規模だからこそできる学習もある。
島の行事を大切に
柏島小学校では地域のお祭りに欠かせない稚児さんや御輿を担ぐ子ども達に配慮した祭りの日の振り替え休日を取る。島の学校は島の行事やしきたりを大切にして回っている。なんてすてきな島なんだろう。
日本一魚の種類が多く、すばらしいサンゴの群生地でもあり、平均二十メートルを越す透明度を誇る海。かつて湾内に定置網があった頃には一網にキハダマグロが二千四百本も揚がったと言われる県内唯一のマグロ定置網。あまりにも自然豊かでかつ人情も豊かなこの島で、子ども達は育まれてきた。
全国の郡部の市町村では少子化に伴い学校を統廃合する動きが出ており、ここ大月町も例外ではない。大月町では来年度町内十校の小学校を統廃合し、新たに大月小学校が生まれる。児童規模を大きくし、社会性を身につけるには大事なことかもしれない。しかし、あえてこの豊かな土地と人情味あふれる島で子どもを育てるメリットは、それ以上に大きなものがあるのではないだろうか?
島人の宝
「教科書に書いてあることだけじゃわからない、大切なモノがきっとここにあるはずさ、それが島人(しまんちゅ)の宝(「BEGIN」島人の宝より)
今、島では統合小学校の設立は認めるが、柏島小学校を分校として残して欲しいという要望を町にあげている。
全国の波に呑まれるのではなく、あえて郡部の小さな島から新しい波を起こせないだろうか。こんな自然の中で子どもを育てたいと願う島外の人にも門戸を開き、環境教育の特認校として活用することはできないだろうか? さとうみ留学なんてのはどうだろう。
小さな島の小さな学校は、地域にとっての大きな灯なのだと私は思う。学校という灯が消えた時、そこには過疎しか残らない。
小さな学校の大きな灯
地域が育む子どもたち
「ドボーン、バシャーン」。
夏、柏島に続く旧橋から子ども達が次々に海に飛び込み、歓声がこだまする。真っ青な海に向かって飛び込むスリルと緊張感。そしてそれができたときの達成感。柏島で子ども達が一人前と認められる儀式でもある。先日もNHKの全国放送で流れ、番組を見た多くの人から柏島の子ども達がうらやましいという便りをもらった。
飛び込みをサポートする上級生、子ども達を見守る地域の人たちの温かいまなざし。ここで育つ子ども達は皆、地域全体に見守られて育つ。
周囲わずか三、九`の柏島には川が無く、昔から水は貴重品だった。当然プールなどはない。
六月下旬、児童の保護者や先生方が一緒になって、赤灯台の近くにある庄屋の浜を一斉清掃し、ブイとロープで囲いをして特設プールを作る。堤防の上には監視用のテントが張られ、毎日保護者が日替わりで監視をする、「海のプール」だ。
魅力あふれる小規模校
地域の子ども達に地域のすばらしさを、体験学習を通じて知ってもらいたいと思い、私たちはこれまで様々な取り組みを小学校やPTAの保護者の方達と一緒に行ってきた。ここでしかできない学習、島の地域の方々のサポート無くしてはできない学習、小規模校ならではの小回りの良さと、行き届いたきめ細やかな指導。
例を挙げると、アオリイカの資源を増やすため漁業者、ダイバー、林業関係者らと一緒に行う人工産卵床の設置、海のすばらしさを実感するシュノーケリングやクリアカヌー体験、海の水質調査、水の大切さを学ぶ学習、山川海のつながり学習、養殖の餌やり体験、島を訪れる観光客やダイバーらへの聞き取り調査、ビーチクリンナップ活動、お年寄りからの地域の文化の聞き取り調査、潜ってテングサを採り、それからトコロテンを作る実習、海藻押し葉づくり、郷土料理作り、トンボ池でのトンボやカエルの観察、子ども達が島の好きな場所の写真を撮り、それに物語を付けてパネルにし、島内を美術館のように見立てて展示する「島の美術館」、それらの学習の成果を地域の人に発表する島の子発表会。揚げればきりがないほどユニークな総合学習が柏島小学校では行われてきた。
全校児童二十人。都市部の人から見れば驚くほど小規模な学校だが、この規模だからこそできる学習もある。
島の行事を大切に
柏島小学校では地域のお祭りに欠かせない稚児さんや御輿を担ぐ子ども達に配慮した祭りの日の振り替え休日を取る。島の学校は島の行事やしきたりを大切にして回っている。なんてすてきな島なんだろう。
日本一魚の種類が多く、すばらしいサンゴの群生地でもあり、平均二十メートルを越す透明度を誇る海。かつて湾内に定置網があった頃には一網にキハダマグロが二千四百本も揚がったと言われる県内唯一のマグロ定置網。あまりにも自然豊かでかつ人情も豊かなこの島で、子ども達は育まれてきた。
全国の郡部の市町村では少子化に伴い学校を統廃合する動きが出ており、ここ大月町も例外ではない。大月町では来年度町内十校の小学校を統廃合し、新たに大月小学校が生まれる。児童規模を大きくし、社会性を身につけるには大事なことかもしれない。しかし、あえてこの豊かな土地と人情味あふれる島で子どもを育てるメリットは、それ以上に大きなものがあるのではないだろうか?
島人の宝
「教科書に書いてあることだけじゃわからない、大切なモノがきっとここにあるはずさ、それが島人(しまんちゅ)の宝(「BEGIN」島人の宝より)
今、島では統合小学校の設立は認めるが、柏島小学校を分校として残して欲しいという要望を町にあげている。
全国の波に呑まれるのではなく、あえて郡部の小さな島から新しい波を起こせないだろうか。こんな自然の中で子どもを育てたいと願う島外の人にも門戸を開き、環境教育の特認校として活用することはできないだろうか? さとうみ留学なんてのはどうだろう。
小さな島の小さな学校は、地域にとっての大きな灯なのだと私は思う。学校という灯が消えた時、そこには過疎しか残らない。
更新:
諒太
/2009年 01月 06日 17時 41分