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2008年10月24日(金) 高知新聞夕刊 命つないだ「たんだ」の井戸
大月発くろしお便り(黒潮実感センター)
                            命つないだ「たんだ」の井戸
柏島中学校の生徒たちによる水運び体験(平成12年)
柏島中学校の生徒たちによる水運び体験(平成12年)

                       川のない島
 夏場、多くの海水浴客やダイバー等でにぎわう柏島。橋の上から海を覗くと、底まで手が届くほど澄み切った海にはまるで水族館のように色とりどりの魚たちが泳いでいる。
 今では橋周辺のキャンプ場近くにはシャワー施設や水洗トイレが整備され、訪れた人が海水を落としさっぱりして帰っていく。蛇口をひねると当たり前のように水が出る水道も、柏島に整備されたのは昭和四十九年のことである。しかしそれ以降も度々水不足が起こり、不便を感じなくなったのは平成十五年に大堂灌水が整備されてからである。
 周囲三、九キロメートルの柏島には川が無く、古くから水の確保が難しかった。水道が敷設されるまでの長い間、島人は「たんだ」の井戸と呼ばれる島の山中にあるたった一つの小さな井戸から飲料水を汲んでいた。この井戸は山に降った雨がいったん谷筋の地中にしみ込み、それが伏流して溜まっているのである。「たんだ」とは柏島小学校の西側に広がる広さ約六反の水田(約五十年前から休耕田)のことである。大量の水を必要とする水田ができたのは、山に降り地中にしみ込んだ雨水が、山裾の低地である「たんだ」にしみ出しているからである。
たんだの井戸から水を運ぶ当時の女の子(撮影年次不明、「ふるさと柏島」より)
たんだの井戸から水を運ぶ当時の女の子(撮影年次不明、「ふるさと柏島」より)

                                   水くみは女子の日課
 「ふるさと柏島」という本によると、水道が敷設される前まで、たんだの水汲みは女子の日課の一つであった。狭い山道を町中まで、にない棒を担ぎ木桶で何度も何度も運んでいた。人手のない家では一荷六銭(大正末期)を払って汲んできてもらっていたとある。まさしく島民にとっては「命の水」である。飲み水や、炊事以外の洗濯、風呂の水などは、すべて家の近くにある井戸「チカイド」で間に合わせたそうだ。
集落の中にあるチカイド
集落の中にあるチカイド
ただチカイドの水は塩分を含んでいて、石鹸を使って体を洗ったりしても泡が立ちにくかったそうである。それゆえ島の人は今も水を本当に大事に使い、節水に努めている。
たんだの井戸をバックに米島区長から説明を受ける生徒たち
たんだの井戸をバックに米島区長から説明を受ける生徒たち
 
                  大切さを体験、実感
 私が黒潮実感センターを立ち上げる前の平成十二年、当時柏島中学校(平成十三年春閉校)の生徒の環境教育を担当していた頃、海の環境学習や様々な体験学習などを行ってきたが、最後のテーマに選んだのが柏島の「水」であった。「命の水の行方を追って〜柏島の水にまつわる今昔〜」と題した環境学習は、今では蛇口から当たり前のように出る水が、柏島にとっていかに大切であったかを生徒達と一緒に体験、実感するためのものであった。学習の内容は、その当時や現在の水事情を、柏島の米島区長に話をしてもらい、当時を再現して「にない」に水を汲んだバケツを吊って運こび、その水でお茶やコーヒーを立てて水道水との飲み比べをしたり、塩分を含むチカイドの水との比較をした。そのほか使った後の水がどこに行くかを調べた。合併浄化槽への加入率が当時五十五%で、残り四十五%の廃水は直接海に流れ込むことがわかり、その下水が流れ込む海の水質調査などを行った。最後に自分たちができることとして台所から流れ出る廃油を各家々から回収して、廃油石鹸をつくり、学習成果をまとめた通信とともに島民に配布した。
パックテストによる水質調査
パックテストによる水質調査

                   水への思いを知って
 こういった島ならではの水に対する特別な思いや歴史を、島のローカルルールとして、ぜひ柏島に海水浴やキャンプ、ダイビングに来られる人にも知ってもらいたい。そうすることで島のくらしを理解してもらい、水にまつわる住民とのトラブルも解消したい。
 柏島を訪れる人も、住んでる人も、ともに気持ちの良い島を作り上げていくためにも。
                 
                 (センター長・神田 優)





更新: 諒太 /2009年 01月 06日 17時 46分

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