2008年12月26日(金) 高知新聞夕刊 贅沢!モイカのするめ
大月発くろしお便り(黒潮実感センター)
贅沢!モイカのするめ

釣り上げられたモイカ。青緑のアイシャドーが美しい。左下に見えるのは餌木(写真はいずれも大月町柏島)
冬になると柏島の景色は一変する。強い日差しの元、ハイビスカスの原色が映える夏とは違い、週の内、半数以上北西の季節風が吹き荒れ、波も高く、さながら冬の日本海のようだ。当然漁に出られる日も限られるが、この時期美味しくなってくるのが地元でモイカと呼ばれるアオリイカだ。
アオリイカは漢字では障泥烏賊と書くが、この名前はヒレの色や形が障泥(あおり)と呼ばれる馬の胴体に巻く泥よけの馬具に似ているところによる。
五月から六月にかけ海藻やスギ、ヒノキで作った人工産卵床に産み付けられた卵は六月から八月頃孵化し、どんどん餌を食べて秋から冬にかけて肥えてくる。このモイカを伝馬船や桟橋から釣り上げる。

モイカを釣るためのさまざまな色の餌木。他にも色々な形がある
餌木で釣る「エギング」
釣り方は大きく分けて二通り。
夜、生かした小アジやハリメと呼ばれるハタンポやテンジクダイの仲間を泳がせて、それに掻き付いてくるモイカを釣り上げる方法と、イカ形や餌木(えぎ)と呼ばれるエビの形をしたルアーで釣る。これを「エギング」と呼び、昨今、全国各地で「エギンガー」と呼ばれる、餌木を使ってモイカを釣る人が若者を中心に増えている。その日の天候や水色、ねらうサイズなどに応じて様々な色や形の餌木を使い分ける。生き餌ではないため疑似餌としての餌木をいかにモイカに美味しそうにアピールするかが重要で、釣り人のテクニック次第で釣果には雲泥の差が出る。生き餌を餌にモイカが食いつくのを待つ受け身形の釣りに対して、エギングは攻めの釣りだ。
給料が安いため日々イカを釣って小遣いを稼ぐ、黒潮実感センターのスタッフ諒太
うまみ成分、最多
モイカは国産のイカの中で最も遊離アミノ酸(うまみ成分)が多く含まれている。そのため甘みがあって柔らかい肉質から、刺身として重宝される。しかしながら量的にもあまり獲れないこともあり高価である。スーパーなどではキロ二千数百円もする。そんな高価なモイカを柏島ではするめにする。一般的によくするめと称して売られているのはスルメイカ(標準和名)のことで、大きさにもよるがだいたい三枚で千円くらい。しかし同じ大きさのモイカのするめになると一枚で千数百円から二千円もする。
モイカを干しているところ。少数しか捕れないので貴重だ柏島では昔からモイカのするめは固定相場だったそうである。ちなみに一斤(六百グラム)五千円。現在でもほぼ同じくらいの値段で売られている。キロあたりに計算すると八千円ほどもする。
口の中に幸せが
柏島では冬はモイカ、夏はスルメ(柏島で言うところのスルメとはケンサキイカのことである)のするめしか食べない。一般的に出回っているするめ(スルメイカ)は、柏島ではマツイカと呼ばれ、贅沢なことにこのイカはほとんど食べない。なぜかと聞くと、「マツイカは堅うて歯が折れる」とか。するめで歯が折れるなんてなんともオーバーな表現だが、甘くて柔らかいモイカやケンサキのような高級食材がいっぱい獲れるからなのだろう。
冬、漁師の家に行くとモイカの一日干しをあぶって出してくれる。醤油とマヨネーズ、それに七味少々をつけていただくと、口の中に幸せが広がっていく。
柏島海中散歩
カエル顔の新種?ジョーフィッシュ
海底に開いた親指大の穴をじーっと見つめていると何やら黄色い顔が。んっ?、カエル?いやいやこれでも立派な魚です。アゴアマダイ科に属するカエルアマダイによく似ているけれど、新種の可能性がある魚で、とりあえずジョーフィシュ(ジョーとは顎という意味で、大きな顎が特徴的な魚という意味)と呼ばれている。
(アクアス提供)海底に垂直な穴を掘ってそこで暮らす臆病な魚で、身体全体をみることはなかなか無い。さらに危険を察知すると巣穴付近の小石をくわえて石の蓋をする。確かこの辺にいたはずなんだけどといくら探しても見つからないときは、たいがい石で蓋がされているときである。柏島の人気者のひとり?である。
センター長・神田優
贅沢!モイカのするめ

釣り上げられたモイカ。青緑のアイシャドーが美しい。左下に見えるのは餌木(写真はいずれも大月町柏島)
冬になると柏島の景色は一変する。強い日差しの元、ハイビスカスの原色が映える夏とは違い、週の内、半数以上北西の季節風が吹き荒れ、波も高く、さながら冬の日本海のようだ。当然漁に出られる日も限られるが、この時期美味しくなってくるのが地元でモイカと呼ばれるアオリイカだ。
アオリイカは漢字では障泥烏賊と書くが、この名前はヒレの色や形が障泥(あおり)と呼ばれる馬の胴体に巻く泥よけの馬具に似ているところによる。
五月から六月にかけ海藻やスギ、ヒノキで作った人工産卵床に産み付けられた卵は六月から八月頃孵化し、どんどん餌を食べて秋から冬にかけて肥えてくる。このモイカを伝馬船や桟橋から釣り上げる。

モイカを釣るためのさまざまな色の餌木。他にも色々な形がある
餌木で釣る「エギング」
釣り方は大きく分けて二通り。
夜、生かした小アジやハリメと呼ばれるハタンポやテンジクダイの仲間を泳がせて、それに掻き付いてくるモイカを釣り上げる方法と、イカ形や餌木(えぎ)と呼ばれるエビの形をしたルアーで釣る。これを「エギング」と呼び、昨今、全国各地で「エギンガー」と呼ばれる、餌木を使ってモイカを釣る人が若者を中心に増えている。その日の天候や水色、ねらうサイズなどに応じて様々な色や形の餌木を使い分ける。生き餌ではないため疑似餌としての餌木をいかにモイカに美味しそうにアピールするかが重要で、釣り人のテクニック次第で釣果には雲泥の差が出る。生き餌を餌にモイカが食いつくのを待つ受け身形の釣りに対して、エギングは攻めの釣りだ。

給料が安いため日々イカを釣って小遣いを稼ぐ、黒潮実感センターのスタッフ諒太
うまみ成分、最多
モイカは国産のイカの中で最も遊離アミノ酸(うまみ成分)が多く含まれている。そのため甘みがあって柔らかい肉質から、刺身として重宝される。しかしながら量的にもあまり獲れないこともあり高価である。スーパーなどではキロ二千数百円もする。そんな高価なモイカを柏島ではするめにする。一般的によくするめと称して売られているのはスルメイカ(標準和名)のことで、大きさにもよるがだいたい三枚で千円くらい。しかし同じ大きさのモイカのするめになると一枚で千数百円から二千円もする。

モイカを干しているところ。少数しか捕れないので貴重だ
口の中に幸せが
柏島では冬はモイカ、夏はスルメ(柏島で言うところのスルメとはケンサキイカのことである)のするめしか食べない。一般的に出回っているするめ(スルメイカ)は、柏島ではマツイカと呼ばれ、贅沢なことにこのイカはほとんど食べない。なぜかと聞くと、「マツイカは堅うて歯が折れる」とか。するめで歯が折れるなんてなんともオーバーな表現だが、甘くて柔らかいモイカやケンサキのような高級食材がいっぱい獲れるからなのだろう。
冬、漁師の家に行くとモイカの一日干しをあぶって出してくれる。醤油とマヨネーズ、それに七味少々をつけていただくと、口の中に幸せが広がっていく。
柏島海中散歩
カエル顔の新種?ジョーフィッシュ
海底に開いた親指大の穴をじーっと見つめていると何やら黄色い顔が。んっ?、カエル?いやいやこれでも立派な魚です。アゴアマダイ科に属するカエルアマダイによく似ているけれど、新種の可能性がある魚で、とりあえずジョーフィシュ(ジョーとは顎という意味で、大きな顎が特徴的な魚という意味)と呼ばれている。

(アクアス提供)
センター長・神田優
更新:
諒太
/2009年 01月 06日 17時 50分