2009年07月24日(金) 高知新聞夕刊 納涼イカ釣り体験
大月発 くろしお便り(黒潮実感センター)
納涼イカ釣り

刻々と色合いを変える空。紫色の空にいさり火が映える
夕方6時、大月町柏島の港に漁船が次々と着岸してくる。乗り込むのは、賑やかな声とともに集まってきた親子連れだ。「船酔いしません?」不安顔のお母さんを横に「今日はイカいっぱい釣れるろうか? 」「生きちゅううちにお刺身にして食べろう」と子ども達は大はしゃぎだ。子ども達の期待と親の不安を乗せて、漁船は次々と出港していく。
夕焼けが歓迎
夏恒例の観光イカ釣り体験が今年も始まった。ここ数年のイカ釣り体験の様子を再現してみよう。
ここで釣れるイカは刺身にするととてもうまいケンサキイカだ。ポイントは島からわずか五分ほどの島の周辺。付く頃には西の空が真っ赤に色づき、最高の夕焼けが歓迎してくれる。オレンジ色からゆっくりと紫色へと、刻々と表情を変える空。船に明かりがともる。シチュエーションは抜群だ。
錨を打ち、船を留めると、船頭さんが仕掛けを渡し、釣り方を教えてくれる。ここでは竿を使わず手釣りで釣る。ボーリングのピンのような形をしたスッテと呼ばれる疑似餌を等間隔に五本ほど付け、一番下に重りが付いたシンプルな仕掛を時々上下にしゃくる。わずかに浮力のあるスッテはしゃくられる度に海中でフワッ、フワッっと魅力的なダンスを踊る。
この動きがたまらないのだろう、まもなく握った糸が重くなる。魚と違ってイカのあたりはググッとかビクビクといった明確なものではない。何か重い気がするとか、何かゴミでも引っかかったような重さを感じる、といったアタリだ。

イカを釣り上げてご満悦
水と墨の攻撃
半信半疑で糸をたぐると突然水面にイカが現れる。「やったー、イカやぁ」と言ってはしゃいでいると「ピュー」と水をかけられびっくり。船の上に揚げて針から外そうとすると今度は「ブッ」と墨攻撃だ。
白い体に赤褐色の細かい点が、まるでネオンサインのように怪しく光る。釣れたイカを船頭さんが慣れた手つきで素早くさばいてくれる。皮を剥がれたイカは手のひらにのせると透けて見える程透明だ。
醤油を少し付け、指でつまんで口の中に入れる。口いっぱいに甘みが広がる。至福の瞬間だ。ゲソはほっぺの内側に張り付き、生きていることを強烈にアピールしてくる。
釣りたてのイカを手際よくさばく船頭さん
本当に飛行機みたい
煌煌と光る船のいさり火につられてトビウオやウミヘビ、タコなど色んな生き物も集まってくる。近づいてきたトビウオを網ですくい揚げた。初めて見る生きたトビウオに、目を丸くする子どもたち。胸びれを広げてみて「本当に飛行機みたい」。どうやってトビウオが飛ぶのか理解できたようだ。

トビウオの胸びれを広げて観察する(円満堂修治さん撮影)楽しい時間は瞬く間に過ぎ、九時には港に戻ってくる。桟橋は漁船のいさり火に照らされ、さながら夏祭りの夜店のよう。いっぱい釣れたイカは袋に入れてお持ち帰り。子どもたちには忘れられない夏の良い想い出となったことだろう。
ただし、漁のことなのでいつもいつも釣れるとは限らない。坊主の日もあるけれど、美しい夕陽と漁り火に集まる様々な生き物を見るだけでも、価値があると思う。
大漁の翌日には島の防波堤で真っ青な空をバックに白いTシャツのようなイカが干されている。お日様の恵みを身体いっぱいに受けたスルメの味もまた格別だ。
真っ青な空をバックに干されるスルメ(円満堂修治さん撮影)
観光イカ釣りは7月1日から9月30日まで、申し込み先は大月町観光協会(TEL 0880-73-1199)まで。
センター長・神田 優
納涼イカ釣り

刻々と色合いを変える空。紫色の空にいさり火が映える
夕方6時、大月町柏島の港に漁船が次々と着岸してくる。乗り込むのは、賑やかな声とともに集まってきた親子連れだ。「船酔いしません?」不安顔のお母さんを横に「今日はイカいっぱい釣れるろうか? 」「生きちゅううちにお刺身にして食べろう」と子ども達は大はしゃぎだ。子ども達の期待と親の不安を乗せて、漁船は次々と出港していく。
夕焼けが歓迎
夏恒例の観光イカ釣り体験が今年も始まった。ここ数年のイカ釣り体験の様子を再現してみよう。
ここで釣れるイカは刺身にするととてもうまいケンサキイカだ。ポイントは島からわずか五分ほどの島の周辺。付く頃には西の空が真っ赤に色づき、最高の夕焼けが歓迎してくれる。オレンジ色からゆっくりと紫色へと、刻々と表情を変える空。船に明かりがともる。シチュエーションは抜群だ。
錨を打ち、船を留めると、船頭さんが仕掛けを渡し、釣り方を教えてくれる。ここでは竿を使わず手釣りで釣る。ボーリングのピンのような形をしたスッテと呼ばれる疑似餌を等間隔に五本ほど付け、一番下に重りが付いたシンプルな仕掛を時々上下にしゃくる。わずかに浮力のあるスッテはしゃくられる度に海中でフワッ、フワッっと魅力的なダンスを踊る。
この動きがたまらないのだろう、まもなく握った糸が重くなる。魚と違ってイカのあたりはググッとかビクビクといった明確なものではない。何か重い気がするとか、何かゴミでも引っかかったような重さを感じる、といったアタリだ。

イカを釣り上げてご満悦
水と墨の攻撃
半信半疑で糸をたぐると突然水面にイカが現れる。「やったー、イカやぁ」と言ってはしゃいでいると「ピュー」と水をかけられびっくり。船の上に揚げて針から外そうとすると今度は「ブッ」と墨攻撃だ。
白い体に赤褐色の細かい点が、まるでネオンサインのように怪しく光る。釣れたイカを船頭さんが慣れた手つきで素早くさばいてくれる。皮を剥がれたイカは手のひらにのせると透けて見える程透明だ。
醤油を少し付け、指でつまんで口の中に入れる。口いっぱいに甘みが広がる。至福の瞬間だ。ゲソはほっぺの内側に張り付き、生きていることを強烈にアピールしてくる。

釣りたてのイカを手際よくさばく船頭さん
本当に飛行機みたい
煌煌と光る船のいさり火につられてトビウオやウミヘビ、タコなど色んな生き物も集まってくる。近づいてきたトビウオを網ですくい揚げた。初めて見る生きたトビウオに、目を丸くする子どもたち。胸びれを広げてみて「本当に飛行機みたい」。どうやってトビウオが飛ぶのか理解できたようだ。

トビウオの胸びれを広げて観察する(円満堂修治さん撮影)
ただし、漁のことなのでいつもいつも釣れるとは限らない。坊主の日もあるけれど、美しい夕陽と漁り火に集まる様々な生き物を見るだけでも、価値があると思う。
大漁の翌日には島の防波堤で真っ青な空をバックに白いTシャツのようなイカが干されている。お日様の恵みを身体いっぱいに受けたスルメの味もまた格別だ。

真っ青な空をバックに干されるスルメ(円満堂修治さん撮影)
観光イカ釣りは7月1日から9月30日まで、申し込み先は大月町観光協会(TEL 0880-73-1199)まで。
センター長・神田 優
更新:
諒太
/2010年 02月 02日 10時 07分