2010年1月22日(金)高知新聞夕刊 海の中の龍馬さん
大月発 くろしお便り(黒潮実感センター)

オオウミウマのオス。メスは黄金色の体色をしている。育児中でお腹が膨らんでいる。(アクアス提供)
海の中の龍馬さん
大河ドラマ「龍馬伝」が話題になっているが、海の中の竜、海の中の馬といえば皆さん何を思い浮かべられるだろうか。タツノオトシゴでではないだろうか。水族館でもおなじみのタツノオトシゴはヨウジウオ科タツノオトシゴ亜科に属する魚で、世界中に41種類ほどが知られている。その魚らしからぬユーモラスな風貌から人気がある。
柏島には、日本に生息する種類の中で最も大きくなる「オオウミウマ」(体長30cm)から、まだ標準和名(新種の可能性がある)が付いていない通称「ジャパニーズピグミーシーホース」(体長1cm弱)程の小さいものまで全部で6種類ほどが生息している。

ジャパニーズピグミーシーホース(まだ和名がないので通称)。体長1cm弱。岩の表面に生えている糸状藻類などにからみついているので、見つけることは非常に困難。よく見ても毛くずのようにしか見えない。(ポレポレダイブ提供)
ほとんどの魚は前後に伸びた姿勢を取るが、タツノオトシゴの仲間は体を直立させ、頭部が前を向く姿勢をとる。この姿が竜や馬の外見に通じることからタツノオトシゴやウミウマなどという和名、もしくはシードラゴン(seadragon)、やシーホース(seahorse)という英名がつけられたものとみられる。こうしてみると見え方は万国共通のようである。
子守りをするオス
タツノオトシゴの仲間はおもしろい繁殖様式をもっている。巻頭にある写真はオオウミウマの写真だが、お腹のあたりが膨らんでいるのがおわかりいただけるだろうか。これはお腹の大きなメスではなく、オスである。オスはお腹のあたりに育児嚢(いくじのう)と呼ばれるカンガルーの袋のようなものを持ち、メスはその中に卵を産み込む。卵がかえるまでの間、オスは大きなお腹を抱えて子守りをすることとなる。種類や環境などにもよるが、卵が孵化するにはふつう2-3週間ほどかかる。孵化したばかりの仔魚(親と同じ形となる稚魚の前段階)は孵化後もしばらくは育児嚢内で過ごし稚魚になる。「出産」する際、オスは尾を海藻などに巻き付け体を固定し、体を震わせながら稚魚を一匹ずつ産出する。稚魚は小さいながらもすでに親とほぼ同じ体型をしており、すぐに海藻などに尾を巻き付けて親と同じ行動をとる。このような繁殖生態をもつことで安産のお守りにするところもある。

タカクラタツのペア。体長15cm。右側のお腹が膨らんでいる方がオス。(ファニーダイブ提供)
イトコにハトコ
タツノオトシゴと同じヨウジウオ科に属する近縁種にヨウジウオの仲間がいる。ヨウジウオとは爪楊枝のように、細長く突き出たおちょぼ口と細長い体をしているのが特徴の魚で、英名をパイプフィッシュ(pipefish)という。その中でもおもしろい名前を付けられたものがいる。タツノイトコという。竜の従兄弟(いとこ)と書いた方がわかりやすいかもしれない。体長8cmほど。体色は褐色から黄褐色だが、色彩の変異が多く斑紋のあるものもある。体中に皮弁(ひべん)のあるものもある。尾びれが無く尾部が巻きこんでいることと、お腹に育児嚢がある点がタツノオトシゴと同じであるが、首が曲がっていないことで区別は容易にできる。さらにこれと非常によく似た種にタツノハトコがあるが、再従兄弟(はとこ)というだけあってタツノイトコとの判別は極めて難しい。ちなみに、私の大学院時代の先輩が命名者である。

タツノイトコ。体長7cm。海藻などにからみついている地味系の魚である。(ポレポレダイブ提供)
龍馬伝
「たっすいがはいかん」を売りにした私も愛飲しているキリンビール。そのロゴマークには伝説上の獣とされる麒麟が描かれているが、この麒麟をよく見てほしい。頭は龍、体は馬。つまり龍馬となる。
麒麟麦酒株式会社の前身ジャパンブルワリーは、グラバーと龍馬が出会い芽吹き、後年、海援隊の流れを汲んで岩崎弥太郎が創立した「三菱」財閥の協力によりキリンビールとして創立された。高知とキリンの意外な関係を知りつつ飲むビールはまたひと味違うかもしれない。
今年のNHK大河ドラマは龍馬伝。龍馬にあやかり今年タツノオトシゴたちもブレイクするかどうか?高知の海の観光大使に任命してみてはとこっそり思っている私である。

サンゴの一種ウミウチワに生息するピグミーシーホース(まだ和名がないので通称)。体長1cm弱。柏島では3個体が確認されている。
(センター長・神田 優)

オオウミウマのオス。メスは黄金色の体色をしている。育児中でお腹が膨らんでいる。(アクアス提供)
海の中の龍馬さん
大河ドラマ「龍馬伝」が話題になっているが、海の中の竜、海の中の馬といえば皆さん何を思い浮かべられるだろうか。タツノオトシゴでではないだろうか。水族館でもおなじみのタツノオトシゴはヨウジウオ科タツノオトシゴ亜科に属する魚で、世界中に41種類ほどが知られている。その魚らしからぬユーモラスな風貌から人気がある。
柏島には、日本に生息する種類の中で最も大きくなる「オオウミウマ」(体長30cm)から、まだ標準和名(新種の可能性がある)が付いていない通称「ジャパニーズピグミーシーホース」(体長1cm弱)程の小さいものまで全部で6種類ほどが生息している。

ジャパニーズピグミーシーホース(まだ和名がないので通称)。体長1cm弱。岩の表面に生えている糸状藻類などにからみついているので、見つけることは非常に困難。よく見ても毛くずのようにしか見えない。(ポレポレダイブ提供)
ほとんどの魚は前後に伸びた姿勢を取るが、タツノオトシゴの仲間は体を直立させ、頭部が前を向く姿勢をとる。この姿が竜や馬の外見に通じることからタツノオトシゴやウミウマなどという和名、もしくはシードラゴン(seadragon)、やシーホース(seahorse)という英名がつけられたものとみられる。こうしてみると見え方は万国共通のようである。
子守りをするオス
タツノオトシゴの仲間はおもしろい繁殖様式をもっている。巻頭にある写真はオオウミウマの写真だが、お腹のあたりが膨らんでいるのがおわかりいただけるだろうか。これはお腹の大きなメスではなく、オスである。オスはお腹のあたりに育児嚢(いくじのう)と呼ばれるカンガルーの袋のようなものを持ち、メスはその中に卵を産み込む。卵がかえるまでの間、オスは大きなお腹を抱えて子守りをすることとなる。種類や環境などにもよるが、卵が孵化するにはふつう2-3週間ほどかかる。孵化したばかりの仔魚(親と同じ形となる稚魚の前段階)は孵化後もしばらくは育児嚢内で過ごし稚魚になる。「出産」する際、オスは尾を海藻などに巻き付け体を固定し、体を震わせながら稚魚を一匹ずつ産出する。稚魚は小さいながらもすでに親とほぼ同じ体型をしており、すぐに海藻などに尾を巻き付けて親と同じ行動をとる。このような繁殖生態をもつことで安産のお守りにするところもある。

タカクラタツのペア。体長15cm。右側のお腹が膨らんでいる方がオス。(ファニーダイブ提供)
イトコにハトコ
タツノオトシゴと同じヨウジウオ科に属する近縁種にヨウジウオの仲間がいる。ヨウジウオとは爪楊枝のように、細長く突き出たおちょぼ口と細長い体をしているのが特徴の魚で、英名をパイプフィッシュ(pipefish)という。その中でもおもしろい名前を付けられたものがいる。タツノイトコという。竜の従兄弟(いとこ)と書いた方がわかりやすいかもしれない。体長8cmほど。体色は褐色から黄褐色だが、色彩の変異が多く斑紋のあるものもある。体中に皮弁(ひべん)のあるものもある。尾びれが無く尾部が巻きこんでいることと、お腹に育児嚢がある点がタツノオトシゴと同じであるが、首が曲がっていないことで区別は容易にできる。さらにこれと非常によく似た種にタツノハトコがあるが、再従兄弟(はとこ)というだけあってタツノイトコとの判別は極めて難しい。ちなみに、私の大学院時代の先輩が命名者である。

タツノイトコ。体長7cm。海藻などにからみついている地味系の魚である。(ポレポレダイブ提供)
龍馬伝
「たっすいがはいかん」を売りにした私も愛飲しているキリンビール。そのロゴマークには伝説上の獣とされる麒麟が描かれているが、この麒麟をよく見てほしい。頭は龍、体は馬。つまり龍馬となる。
麒麟麦酒株式会社の前身ジャパンブルワリーは、グラバーと龍馬が出会い芽吹き、後年、海援隊の流れを汲んで岩崎弥太郎が創立した「三菱」財閥の協力によりキリンビールとして創立された。高知とキリンの意外な関係を知りつつ飲むビールはまたひと味違うかもしれない。
今年のNHK大河ドラマは龍馬伝。龍馬にあやかり今年タツノオトシゴたちもブレイクするかどうか?高知の海の観光大使に任命してみてはとこっそり思っている私である。

サンゴの一種ウミウチワに生息するピグミーシーホース(まだ和名がないので通称)。体長1cm弱。柏島では3個体が確認されている。
(センター長・神田 優)
更新:
きのこ
/2010年 03月 29日 13時 40分