2010年9月24日(金) 高知新聞夕刊 ボランティアの夏休み
大月発くろしお便り(黒潮実感センター)

親子サマースクール2010
休み無しで
9月に入り、今年もやっと長い長い夏休みが終わった。世間の人の夏休みは、エコツアーや子ども向けのサマースクールなどを行っている我々にとっては最も忙しい時期だ。
今年は主催事業である子どもサマースクール(2泊3日〜3泊4日)を3回、親子サマースクール(2泊3日)2回、成人向けのエコツアーを(1泊2日〜3泊4日)3回、その他、依頼のあった小学校単位での体験学習を2回、親子体験学習3回、四万十高校の研修、高知大学の柏島学(実習)、一般の方からのエコツアーなど、7月から8月末まで文字通り休み無しの状態だった。
現在の黒潮実感センターの職員は2人(1名公募中)。この体制ではとてもこなしきれないのだが、それが実行できているのは私たちの活動を支えてくれる縁の下の力持ちであるボランティアのおかげなのだ。例えばこの夏は有償、無償を含め、学生から社会人までの約20人が県内外から参加してくれた。
子どもサマースクールは小学校3年生から高校3年生までを対象としている。4月頃になるとリピーターの親御さんから早々とお申し込みの電話がかかってくる。7月の夏休み前。NPO高知市民会議が県内の学校に情報誌「わいわいくじら」を配布すると、その日は朝から申し込みが殺到し、ほぼその日の内に定員に達してしまう。
当センターのスクールは少人数制で体験だけでなく、実感が伴うようなツアーを行いたいと十数人までとしている。あとは気の毒だがキャンセル待ちとなる。予約がすぐに埋まるのはうれしい反面、もう少し体制が整えば、もっと多くの子ども達に海のすばらしさに触れてもらえるのにと残念に思う。
慕われることが励みに
サマースクールが始まる前からボランティアの仕事は始まる。まずは施設の掃除。大月町からお借りしている、旧柏島中学校の施設は古いが、古いのと汚いのとは違う。古くても来てくれるお客さんに気持ちよく過ごしてもらうために、畳の部屋から教室、廊下、窓、シャワー室、トイレに至るまできれいに拭き掃除をする。そして布団を干し、シーツやタオルケットを洗濯し、子ども達の到着を待つ。次に参加者リストをもとに体験学習に必要なシュノーケリングやクリアカヌー等の道具を準備する。

ボランティアと一緒にシュノーケリングを楽しむ子どもたち

シュノーケリング機材の洗い物
子ども達が来てからは体験学習の補助だけでなく、朝起きてから夜寝るまでお世話をする。子ども達は就寝時間を過ぎてもおとなしく寝ることはない。何度も注意しに行ったり、体調を崩した子はいないかなど24時間体制で見守る。スタッフはもちろんだがボランティアもタフでなければ体が持たない。それでも子ども達とふれあい、慕われ頼りにされることで彼らのモチベーションは維持されるのだ。
サマースクール最終日、お別れの時みんなで「また来いよー」と子ども達を乗せた車が見えなくなるまでずっと手を振る。子ども達もそれを見て「来年また絶対来るきねぇ」と車の窓から体を乗り出しボランティアの姿が見えなくなるまで手を振る。
一つのツアーが終わったらすぐに施設の掃除へと取りかかる。こうした日々が夏の間中続く。

見えなくなるまでお見送り
「見釣り」で晩ごはん
そんなツアーが一段落した夏の終わりのある日、ボランティアのメンバーらを連れてオフを楽しんだ。普段同じように海に潜っているのに、この日ばかりはみんなが子どものように時間が経つのも忘れて丸一日遊んだ。
晩の食事を調達するために、シュノーケリングをしながら魚を見つけて釣る「見釣り」をした。お目当ての魚が餌に食いついた瞬間を目で確かめしゃくる。釣り糸からビクビク伝わってくる魚の感触を手に「獲ったどぉー」の声。マスク越しに満面の笑みがこぼれた。

「見釣り」でアカハタをゲットしたボランティアのタクロー
夕方、素潜りで採った貝と釣った魚を自分たちで料理し、それを肴に夕陽がきれいな「後の浜」に行き、みんなで沈みゆく美しい夕陽を見ながらビールで乾杯した。
また別の日には夜船を出してイカを釣り、釣りだちをその場で刺し身にする。透き通って下が見える様な刺し身を直接手でつかみほお張る。「うー、最高やー、こんなん食べたこと無い!」。光に照らされた海面にトビウオの姿を見つけ、タモ網ですくう。これもすぐさまその場で刺身にする。みんなで幸せを実感しながら、過酷だった夏の日々を振り返る。一生懸命がんばったからこそ得られるオフの日の満足感だ。

今年のボランティア。卒論研究生、大学、専門学校、高校のインターンシップ生、学生時代から来てくれている社会人ら
エコツーリズム大賞
この様なサマースクールやエコツアー、環境学習などをかれこれ10年以上続けてきたことなどが評価され、今回環境省主催第6回エコツーリズム大賞を受賞することができた(本誌でも23日朝刊で報道された。25日に東京で授賞式)。
全国各地で大規模なエコツアーを開催しているような大きな団体ではなく、職員わずか2人の、高知のもっとも端っこにある小さな島での活動がこうして評価されたのは、名前は表には出てこないけれど、センターの活動を支持してくれ、毎年毎年汗を流してくれたボランティアの下支えがあったればこそである。
過去から現在に至るまでのボランティアの皆さんや、当センターを支えてくださっている全国五百数十人の友の会の会員の皆さんに心より感謝したい。
(センター長・神田 優)
親子サマースクール2010
休み無しで
9月に入り、今年もやっと長い長い夏休みが終わった。世間の人の夏休みは、エコツアーや子ども向けのサマースクールなどを行っている我々にとっては最も忙しい時期だ。
今年は主催事業である子どもサマースクール(2泊3日〜3泊4日)を3回、親子サマースクール(2泊3日)2回、成人向けのエコツアーを(1泊2日〜3泊4日)3回、その他、依頼のあった小学校単位での体験学習を2回、親子体験学習3回、四万十高校の研修、高知大学の柏島学(実習)、一般の方からのエコツアーなど、7月から8月末まで文字通り休み無しの状態だった。
現在の黒潮実感センターの職員は2人(1名公募中)。この体制ではとてもこなしきれないのだが、それが実行できているのは私たちの活動を支えてくれる縁の下の力持ちであるボランティアのおかげなのだ。例えばこの夏は有償、無償を含め、学生から社会人までの約20人が県内外から参加してくれた。
子どもサマースクールは小学校3年生から高校3年生までを対象としている。4月頃になるとリピーターの親御さんから早々とお申し込みの電話がかかってくる。7月の夏休み前。NPO高知市民会議が県内の学校に情報誌「わいわいくじら」を配布すると、その日は朝から申し込みが殺到し、ほぼその日の内に定員に達してしまう。
当センターのスクールは少人数制で体験だけでなく、実感が伴うようなツアーを行いたいと十数人までとしている。あとは気の毒だがキャンセル待ちとなる。予約がすぐに埋まるのはうれしい反面、もう少し体制が整えば、もっと多くの子ども達に海のすばらしさに触れてもらえるのにと残念に思う。
慕われることが励みに
サマースクールが始まる前からボランティアの仕事は始まる。まずは施設の掃除。大月町からお借りしている、旧柏島中学校の施設は古いが、古いのと汚いのとは違う。古くても来てくれるお客さんに気持ちよく過ごしてもらうために、畳の部屋から教室、廊下、窓、シャワー室、トイレに至るまできれいに拭き掃除をする。そして布団を干し、シーツやタオルケットを洗濯し、子ども達の到着を待つ。次に参加者リストをもとに体験学習に必要なシュノーケリングやクリアカヌー等の道具を準備する。
ボランティアと一緒にシュノーケリングを楽しむ子どもたち
シュノーケリング機材の洗い物
子ども達が来てからは体験学習の補助だけでなく、朝起きてから夜寝るまでお世話をする。子ども達は就寝時間を過ぎてもおとなしく寝ることはない。何度も注意しに行ったり、体調を崩した子はいないかなど24時間体制で見守る。スタッフはもちろんだがボランティアもタフでなければ体が持たない。それでも子ども達とふれあい、慕われ頼りにされることで彼らのモチベーションは維持されるのだ。
サマースクール最終日、お別れの時みんなで「また来いよー」と子ども達を乗せた車が見えなくなるまでずっと手を振る。子ども達もそれを見て「来年また絶対来るきねぇ」と車の窓から体を乗り出しボランティアの姿が見えなくなるまで手を振る。
一つのツアーが終わったらすぐに施設の掃除へと取りかかる。こうした日々が夏の間中続く。
見えなくなるまでお見送り
「見釣り」で晩ごはん
そんなツアーが一段落した夏の終わりのある日、ボランティアのメンバーらを連れてオフを楽しんだ。普段同じように海に潜っているのに、この日ばかりはみんなが子どものように時間が経つのも忘れて丸一日遊んだ。
晩の食事を調達するために、シュノーケリングをしながら魚を見つけて釣る「見釣り」をした。お目当ての魚が餌に食いついた瞬間を目で確かめしゃくる。釣り糸からビクビク伝わってくる魚の感触を手に「獲ったどぉー」の声。マスク越しに満面の笑みがこぼれた。
「見釣り」でアカハタをゲットしたボランティアのタクロー
夕方、素潜りで採った貝と釣った魚を自分たちで料理し、それを肴に夕陽がきれいな「後の浜」に行き、みんなで沈みゆく美しい夕陽を見ながらビールで乾杯した。
また別の日には夜船を出してイカを釣り、釣りだちをその場で刺し身にする。透き通って下が見える様な刺し身を直接手でつかみほお張る。「うー、最高やー、こんなん食べたこと無い!」。光に照らされた海面にトビウオの姿を見つけ、タモ網ですくう。これもすぐさまその場で刺身にする。みんなで幸せを実感しながら、過酷だった夏の日々を振り返る。一生懸命がんばったからこそ得られるオフの日の満足感だ。
今年のボランティア。卒論研究生、大学、専門学校、高校のインターンシップ生、学生時代から来てくれている社会人ら
エコツーリズム大賞
この様なサマースクールやエコツアー、環境学習などをかれこれ10年以上続けてきたことなどが評価され、今回環境省主催第6回エコツーリズム大賞を受賞することができた(本誌でも23日朝刊で報道された。25日に東京で授賞式)。
全国各地で大規模なエコツアーを開催しているような大きな団体ではなく、職員わずか2人の、高知のもっとも端っこにある小さな島での活動がこうして評価されたのは、名前は表には出てこないけれど、センターの活動を支持してくれ、毎年毎年汗を流してくれたボランティアの下支えがあったればこそである。
過去から現在に至るまでのボランティアの皆さんや、当センターを支えてくださっている全国五百数十人の友の会の会員の皆さんに心より感謝したい。
(センター長・神田 優)
投稿:
きのこ
/2010年 10月 20日 10時 47分