NPO法人黒潮実感センター
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2011年4月8日(金) 高知新聞夕刊 被災した子らを柏島へ
大月発 くろしお便り(黒潮実感センター)
被災地の子らに高知に疎開してきてもらおうとの思いを込めて作ったウェブポスターの一部(協力・梅原デザイン事務所)
被災地の子らに高知に疎開してきてもらおうとの思いを込めて作ったウェブポスターの一部(協力・梅原デザイン事務所)

               被災した子らを柏島へ

 まず最初に、東日本大震災で被災された皆様に、心よりお見舞いを申し上げ、また、亡くなられた皆様のご冥福をお祈りします。そして今回は、私たち黒潮実感センターが考え実行しようとしている、被災した子どもらの受け入れなどの、災害支援活動などについて報告します。

                 衝撃の映像
 3月11日午後2時46分。その日の柏島は、風はあるものの普段と変わらなかった。私たちは事務所で仕事をしていた。スタッフの河アさんの携帯が鳴った。兵庫県に住んでいる彼女の家族からだった。「さっき地震があってテレビをつけたら、東北で大きな地震があったみたいだけど、そっちは大丈夫?」
 急いでテレビをつけた。日本地図が表示され東北沿岸域に津波警報が発令され、アナウンサーが注意を呼びかけていた。テレビ画面は宮城県の漁港周辺の海を映していた。自分たちのところが揺れなかったせいか、それほど大きな津波が来るとは思いもしなかった。
 だが数分後、潮位がしだいに高くなり岸壁から陸に水がはい上がってきた。あれよあれよという間に大きな津波が次々に押し寄せ、大型漁船や連絡船の係留ロープが切れ、船が次々と流され陸に打ち上げられた。その後家や車、ありとあらゆるものが瞬く間に黒い波にのみ込まれ、翻弄される光景を目にした。
 これは今、本当に日本で起きていることなのか?にわかには信じられなかった。次々と映し出される衝撃の映像に目がくぎ付けになり、テレビの前から離れられなかった。
        東日本大震災被災地の様子。建物の上に取り残された連絡船        (岩手県大槌町、猿舘祐子氏提供)
        東日本大震災被災地の様子。建物の上に取り残された連絡船        (岩手県大槌町、猿舘祐子氏提供)

 数分後、ふと我に返り、こっちにも津波が来ると思い、急いで船を築港から出し、浮き桟橋に係留した。そして消防団員として港に戻り、高波防止のゲートを閉めた。家族と車を高台に避難させたのち、港に集まり潮位の変化を見守った。

                教育活動を通じ支援
 津波により命や財産が奪われ、原発災害により先の見えない状況になっている今、私たち黒潮実感センターでは、被災された地域の復興には長期間を要すと考え、中長期にわたる災害支援活動として「教育活動」を通した災害支援を行いたいと考えている。
 これは私たちがこれまで十二年間行ってきた、環境教育や体験学習のノウハウを活用した支援ということになる。単なる疎開先での住居の提供ではなく、自然学校としての黒潮実感センターの得意分野で、被災された方々、特に子どもたちを心的ストレスから開放し、いち早く平常時の生活を取り戻し、学校での授業が受けられるようにしたい。
 津波の恐怖により海を恐れるようになった子どもたちにいま一度、海のすばらしさを伝えたい。柏島の美しい海で、子どもたちの心のケアができないものかと思うのだ。
実感センターが行っているシュノーケリング体験。海で子供らの心のケアをと考えている
実感センターが行っているシュノーケリング体験。海で子供らの心のケアをと考えている


                 家族も受け入れ
 具体的には現在大月町からお借りしている旧柏島中学校の教室を改造し、畳敷きにしている部屋(一教室を半分に仕切った畳約十二畳分)を四部屋ほど子どもと家族に無償で提供する。期間は最長一年間。旧家庭科室を使って自炊してもらう。風呂もあるので共用で使ってもらう。子どもの数によっては共用の勉強部屋も用意するつもりだ。
 その他、年間を通じて海や山での環境学習、体験プログラムを提供し、子どもたちが楽しく過ごすことができるようにしたい。宿毛市でも公営住宅を提供すると申し出てくださっているので、こちらに越してきた子どもたちにも同プログラムを無償で提供したいと考えている。
 南海地震が想定される高知県の海岸部への避難については賛否もあろうが、海から逃げるだけでなく海とのつきあい方を学ぶ事も重要と考え、津波災害に対する備えや勉強もしていきたいと思っている。受け入れについては次のHPを参照ください(http://www.orquesta.org/kuroshio/)

                南海地震に備えマップ
 実感センターでは数年前から、近い将来起こるとされる南海地震に備え、これまでいくつかの計画を練ってきた。
 柏島には二つの地区があり、柏島地区では「柏島小学校」、渡し場地区では「山の神」、「田中さんの畑」の3カ所が避難場所に指定されている。島民は、どこに逃げるかを皆知っている。しかし、近年大勢訪れるレジャー客や観光客がはたして分かるだろうか?
 以前ダイバーにアンケートをしたが、何年もリピーターとして来ている人たちでさえ、海とダイビングショップと旅館・民宿しか行ったことがなく、島内を歩き回ったことはないとの回答がほとんどだった。確かに避難場所「田中さんの畑」といっても、それどこ?と思うだろう。
避難場所を示す看板「田中さんの畑」。それってどこ?(大月町柏島、円満堂修治氏提供)
避難場所を示す看板「田中さんの畑」。それってどこ?(大月町柏島、円満堂修治氏提供)

 普通ホテルなどでは各部屋に必ず避難口と避難経路を示した地図やパンフレットが置かれており、チェックインの際にフロントで確認するようお願いされる。観光客が大勢来るところであれば、こういった外部からのお客さんに対する説明は絶対に必要だと思う。現在センターではこういった避難場所を記すだけでなく、安全な避難経路を調査して島内避難マップを作成中である。

                避難施設の耐震補強を
 普段なら最短コースで行ける道が、地震が来ればブロック塀の倒壊や瓦の落下などが想定され、漁村によくある細い路地はがれきが散乱して通れない可能性がある。子どもやお年寄りは乗り越えて行くのは難しく、仮に通れても津波到達までの短い時間内の避難は不可能だろう。
漁村集落に多い狭い路地(柏島)
漁村集落に多い狭い路地(柏島)

 また海岸縁の広い道路を移動しようとしても、集落を護るための防潮堤が素早く閉じられるため移動できない。柏島地区や行政とも協力して有効な避難経路の確保や、倒壊の可能性のあるようなブロック塀の補強などもしていく必要がある。
 これらをふまえた上での避難マップを作り、全戸、および民宿・旅館、ダイビングショップとなどにも配布しようと考えている。しかしそれだけでは不十分である。いくら頭で分かっていても常日頃から避難訓練をしていなければ、いざというときに役には立たないだろう。
 震災の翌日、一歳の息子の手を引いて、自宅から柏島小学校までの避難路を歩いてみた。歩きながら、ここの塀は危険ではとか、この道は狭くて瓦が落ちてきた時に歩きづらくないか、夜間照明がないときにはどうするかなどとチェックをして回った。そしてやっとの思いで高台にある小学校に行き着いた。だが、一昨年廃校となった柏島小学校は避難場所に指定されてはいるが、校舎の耐震性が保障されていない。
 避難施設が倒壊してしまったら逃げ場が無くなる。大月町だけでなく全国の自治体では学校が避難場所として指定されているところが多い。こういったところの耐震もぜひ国、県にも考えていただきたい。しかし、最も重要なことは、住民自らの心構えであることは間違いない。
                 (センター長・神田優)
更新: Kanda /2011年 06月 30日 08時 47分

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