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2011年12月17日(土)高知新聞朝刊 北西風の贈り物
大月発 くろしお便り(黒潮実感センター)

海に突き出した干棚に、炊きあげた芋を丁寧に一つ一つ並べて干す。北西風がおいしいひがしやまを作る(写真はいずれも大月町竜ヶ迫)
海に突き出した干棚に、炊きあげた芋を丁寧に一つ一つ並べて干す。北西風がおいしいひがしやまを作る(写真はいずれも大月町竜ヶ迫)


                 一押し「ひがしやま」
 今年もあとわずか。大月町柏島では、冬の到来を告げる北西の季節風が連日吹き荒れている。しかし、家に入り風を遮断すると、お日様のお陰で部屋の中はポッカポカだ。
 大月の冬の味覚といえば海では寒ブリ、陸ではお日様の光をいっぱい浴びた甘くておいしいミカンもあるが、私の一押しは何と言っても「ひがしやま」だ。
 高知の人は「ひがしやま」といえば飴色をした干し芋をすぐに思い浮かべるだろうが、県外の人にはヒガシヤマ? どこの山? とピンと来ないらしい。高知では干し芋のことを「ひがしやま」と呼ぶと話すと、「へぇそうなんだ」と言われるが、その次には「で、何でひがしやまなん?」ときかれることが多い。
私もどうして「ひがしやま」と呼ぶのかわからずにいた。大月に越してきてからその謎がやっと解け、腑に落ちた。「ひがしやま」は漢字で東山と書くのではなく、「干菓子山」と書くと郷土史家の宅見先生に教えてもらった。なるほど、山(畑)でつくる干し菓子なので、「ひがしやま」か。合点! 合点!
 高知市内の私の実家でも子供の頃、干し芋は作っていた。でも「ひがしやま」ではなく、「ほしか」と呼ばれているものだった。おばあちゃんが畑で作った普通のお芋(赤芋)を、生のまま薄く切っては「えびら」(竹で編んだ平かご)に広げ、日当たりの良い縁に干していた。

                  衝撃の竜ヶ迫産
 干し上がった「ほしか」をつまんで食べてみたがそのままでは固くて歯が立たなかった。七輪で焼いてもらって食べたのが懐かしい。本来非常食である「ほしか」は臼でひいて粉にし、丸めて中に黒砂糖を入れて蒸し、おまんじゅうにして食べた。「ひがしやま」は親戚のおばさんからもらってよく食べた。甘くてニチャニチャと歯にひっつくが一度食べ出すと止まらなくなる。私の大好物の一つだった。
 そんな「ひがしやま」好きの私が衝撃を受けたのが大月の竜ヶ迫の「ひがしやま」だった。一口食べてみてその甘さと軟らかさに驚いた。これまで食べてきた「ひがしやま」とは全く違う、正にキャラメルだった。
 このおいしい「ひがしやま」が作られているのは大月町の西海岸、宿毛湾に面した竜ヶ迫という小さな集落だ。平地がほとんどなく、海岸縁まで山が迫っているこの地域では、山を開墾して段々畑を作り、そこに芋や自分たちが食べる野菜などを作っている。

山を開墾し石垣をついて作った段々畑で芋を栽培する
山を開墾し石垣をついて作った段々畑で芋を栽培する


 長年「ひがしやま」作りをされている山田一郎さん(83)と奥さんのスミコさん(80)に作り方やいろいろなご苦労を伺った。

                 ニンジンイモが最適

丁寧に2度皮を剥いだニンジンイモ。ニンジンのようなやわらかいオレンジ色が印象的
丁寧に2度皮を剥いだニンジンイモ。ニンジンのようなやわらかいオレンジ色が印象的


 ここで「ひがしやま」用に使っているのは通称ニンジンイモと呼ばれる「紅ハヤト」という品種で、焼き芋などにするとベチャベチャでおいしくないが、「ひがしやま」には最適だ。
 「ひがしやま」作りはまず材料の芋を丁寧に洗い、皮を剥ぐことから始まる。皮は2回剥ぐことで灰汁が出にくくなり、美しい仕上がりになる。かまどに薪をくべながら大鍋で4〜5時間かけじっくり炊きあげる。添加物は一切無しで水と芋のみだ。
 ゆであがった芋は丁寧に取り上げ、一つ一つ形を整えてから芋同士がくっつかないように並べて干す。天気を見ながら干棚で2〜3週間かけてじっくり干す。暖かい日差しが降り注ぐ道路沿いに作られた干棚には、毎日のように海から冷たい北西の潮風が吹きつけ、「ひがしやま」はさらに甘みを増していく。
 重い芋を運んだり洗ったり、煮たり干したりと手間暇かけて作られる「ひがしやま」だが、60キロの生芋からは10キロ程の製品にしかならないそうだ。

山田さんの息子、一幸さんは発明家だ。両親のために芋を運ぶ台車や、大釜を持ち上げるための木製クレーン?などを制作している。この台車は持ち手を前に倒すと荷台が下がり重い芋を載せやすくし、持ち手を戻すと上に上がる優れもの
山田さんの息子、一幸さんは発明家だ。両親のために芋を運ぶ台車や、大釜を持ち上げるための木製クレーン?などを制作している。この台車は持ち手を前に倒すと荷台が下がり重い芋を載せやすくし、持ち手を戻すと上に上がる優れもの


                  究極のスローフード
 昨今ファーストフードに対抗してスローフードが世界的にも見直されつつある。水と芋だけで作る「干菓子山」は究極のスローフードだ。そこでとれる自然の恵みを、その土地の特性をうまく利用しながらおいしくいただく。先人たちの知恵と技はやっぱりすごい。
 大月町のPRもあり「ひがしやま」の価値が認められ脚光を浴びているが、山田さんをはじめこれらの技を持つ人たちはお年寄りが多く、あと何年作れるかわからないという。
 去りゆく技であってはならない。伝統や文化を産業として残し継承していくために、私たちにできることは、その価値を見出し、受け継いでいくことだと思う。そのためのいろんなアイデアを考えながら、子どもと一緒においしい「ひがしやま」を食べるのが私の冬の楽しみである。

                         (センター長・神田優)

更新: ちー /2011年 12月 22日 11時 21分

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